apt-X LL対応のイヤホンをゲームに使ってみた。実際の遅延・安定性を比較

前から気になっていた「apt-X Low Latency」コーデックに対応したBluetoothイヤホンを購入しました。

この「apt-X Low Latency」というBluetoothのコーデック、名前はよく聞くんですが、実際に検索してみると情報がほとんどない…。まあ、対応イヤホンが絶望的に少ないのでしょうがないんですが…。

ということで、実際に購入してしばらく使ってみたので、遅延が目立ちやすい「ゲーム」での使用感、また、その他感じた点について紹介します。

目次

apt-X Low Latencyの特徴

遅延が少ない

「apt-X Low Latency」(以下 apt-X LL)は、その名の通り、Qualcommの開発したBluetoothコーデックである「apt-X」の派生です。ビットレートなど、基本的な仕様は同じですが、「Low Latency」という名の通り低遅延なのが特徴です。

以下はコーデックごとの遅延時間。いくつかの情報を元に平均的な数値を記載しています。使用する機器、環境によって左右されますので、参考程度にお願いします。

コーデック遅延
SBC170ms
AAC100ms
apt-X70ms
apt-X HD130ms
apt-X Low Latency40ms
apt-X Adaptive(低遅延モード)50~80ms

apt-X LLがずば抜けて遅延が少ないのがわかるかと思います。唯一、肉薄しているのは「apt-X Adaptive」でも、少なくとも10ms以上の差があります。

ただし、「apt-X Adaptive」は、低遅延・高音質の両立を売りとしているコーデックであるため、遅延以外の点においては優位です。

apt-X LL対応のイヤホンは少ない

どれを購入するか探してみて初めて気づきましたが、「apt-X LL」に対応した製品は極端に少ないです。

例えば、今主流の「完全ワイヤレスイヤホン(TWS)」でapt-X LL対応の製品は、価格コムで探しても3つしか出てきません。4万超えが2つに、2018年発売の古いものが1つのみ…。

そのため、「充電ポートがUSB-C」「1万円以下で買えるもの」などと条件を入れていくと、全然出てこなくなります。

特にこの完全ワイヤレスタイプは、他のものに比べて「安定性」ではどうしても劣るため、apt-X LLとは相性が悪いのも原因だと思われます。

ヘッドホンは比較的豊富

ただ、ヘッドホンであれば対応製品は多めなので、イヤホンでなくても良い方はそちらがおすすめです。

【aptX-LL対応&ノイズキャンセリング】 dyplay ANC Hybrid ワイヤレス ヘッドホン ノイズキャンセリング SBC AAC APTX APTX-LL Bluetooth5.0 全対応 低遅延 ハンズフリー通話可能 Type- C充電口 密閉型 iPhone/Android/PC/Mac対応 ブルートゥースヘッドフォン
MeloAudio
Amazonなどで「apt-X LL」と検索すると商品自体はいっぱい出てくるんですが、よく見たら非対応の商品ばかりだったりするので注意しましょう…

送信側/受信側の両方対応が必須

Bluetoothのコーデックは、「送信側(スマホ、タブレットなど)」と「受信側(イヤホン、ヘッドホン)」の両方が対応していないと有効になりません。

aptX LL対応の機器は実はかなり少なく、Qualcomm製SoCを搭載したAndroidスマホですら対応している機種は見たことがありません。

↓以下はPixel 6 Pro(SoCはSamsung製)のコーデック設定画面。apt-X LL対応イヤホンを接続してもコーデックの一覧に表示されない。

また、iPhone、iPad、Macはすべて非対応となっています。iPhone、iPadでは「aptX」も使用不可で、Macでは設定を行うことで「apt-X」が使用できるようですが、「apt-X LL」までは使用できないようです。

スポンサーリンク

apt-X LL非対応でも”USBアダプタ”で対応させることが可能

先程、接続する機器の両方が対応している必要があると言いましたが、パソコンやゲーム機、タブレット等であれば、別途以下のようなアダプタを取り付けすることでapt-X LLに対応させることが可能です。

このアダプタは、パソコン/ゲーム機などをBluetooth対応させるのではなく、アダプタそのものがイヤホンなどとペアリングし、それをUSBオーディオとして認識させることで使用可能となります。

この仕様により、Nintendo Switch/PS4/パソコン/タブレットなど多くの機器で使用可能なほか、USBアダプタを差し替えるだけでBluetoothイヤホンを複数の機器で使えるというメリットもあります。

Bluetoothバージョンやメーカーに注意

ただ、使用するUSBアダプタによってBluetoothバージョンや機能にばらつきがあり、apt-X LL対応のものでもあまり低遅延にならないものもあるので注意しましょう。実際、私は「MAXKU」というメーカーの安いUSBアダプタ(apt-X LL対応)を使用していましたが、通信がやや不安定なうえ、遅延も通常のBluetoothイヤホンと変わらないレベルで遅延がありました。

USBアダプタを購入する際は、少なくともBluetooth 5.0以降対応実績のあるメーカーのモノを選びましょう。

おすすめは「Creative BT-W3」

私は現在「Creative BT-W3」という5,000円程度のものを使用しています。Bluetoothバージョンは5.0で、apt-X LLにももちろん対応。パソコン、Switchで問題なく使用でき、apt-X LLで接続すれば明らかに低遅延となりました

アダプタの先端はUSB-Cとなっていますが、USB-Aのアダプタが付属しているため、パソコンやSwitchのドックにも接続可能。右側のアダプタは通話時にマイク入力を可能にするもので、今回は使用しません。

※ちなみに、すでに後継モデルが発売されていますが、それぞれ対応コーデックが異なっており、いずれも「apt-X Low Latency」には非対応となっていますので注意しましょう。

イヤホンは左右一体型の「CX350 BT」を購入

本当は完全ワイヤレスタイプが欲しかったのですが、流石に4万は出せなかったので左右一体型の「CX350 BT」を購入。

2020年発売の製品なので、どうしても型落ち感は否めませんが、Bluetoothバージョンは5.0、充電ポートはUSB-Cと、個人的に外せない条件はクリアしており、価格も1万円ちょっとと控えめだったので選択しました。

まず、開封して感じたのは、1万円するイヤホンにしてはだいぶ安っぽいということ。最近では5,000円以下でかなりまともな完全ワイヤレスイヤホンが購入できますからね。

ただ、この形状はバッテリー容量を大きくできるので、電池もちが良いものが多いというメリットもあります。このイヤホンも電池持ちは10時間と比較的長めです。※当然、apt-X LLで使用する場合には少し短くなります。

充電ポートはUSB-Cとなっています。ただ、充電のたびにカバーを外さないといけないのは少し面倒…

スポンサーリンク

Nintendo Switchで使用してみる

Nintendo Switchは、少し前のアップデートでBluetoothオーディオ機器との接続に対応しましたが、対応コーデックは「SBC」のみ。そのままでは当然「apt-X LL」の恩恵は受けれません。

ということで、私は少し前にも書いたとおり、「Creative BT-W3」というUSBアダプタを接続して使用しています。

遅延の比較

Nintendo Switchで「スプラトゥーン2」を起動し、以下でそれぞれ撮影を行いました。撮影はiPhone 13 Proで行い、イヤホンはマイクに近づけて録音しています。

順番に再生

まずはそれぞれ順番に再生。全く同じ操作をしているわけではありませんが、なんとなくapt-Xの遅延が大きいことがわかるかと思います。

同時再生

こちらのほうがより分かりやすいかと思います。「apt-X」「apt-X LL」をそれぞれ本体内蔵スピーカーと映像を合わせて再生し、遅延の比較を行いました。

1回目:apt-X
2回目:apt-X Low Latency

apt-Xは体感できるほど大きな遅延が起こっているのに対し、「aptX LL」ではほとんど遅延がないことがわかるかと思います。

スポンサーリンク

スプラトゥーン2などの対人ゲームでも十分使える

apt-X LL接続をした状態だと、私はほとんど遅延を感じません。既に2週間程ゲームにて使用していますが、全く問題なく使用できています。

効果音がズレないので違和感も少ない

特にapt-X LLの恩恵を受けていると感じるのがチャージが必要な武器を使用したときです。スプラトゥーンでは、チャージが完了したことが効果音で分かるのですが、遅延があるとそのタイミングがずれてしまい、どうしても違和感がありました。

apt-X LLで接続していると、この場合でも体感できるほどの遅延はないので、違和感なくプレイできます。

↑実際にプレイしている方でないと分かりづらいと思いますが、apt-Xの場合、遅延の影響でタイミングがズレてしまうことが多く、せっかくのチャージ速度を活かしづらい上に、違和感がかなりありました。

他のコーデックと比較するとやや不安定

低遅延で音声を伝送するということで、当然ではありますが、やや不安定なことは否めません。

特に接続直後は顕著で、毎回ではないものの、5秒程度の間かなりノイズが乗ることがあります。とはいえ、数秒待てば正常になりますが。

また、再生中も、デバイスとの距離が離れたり、間に無線機器などがあると干渉が起こることもありました。普通に家で使用する場合には問題ないと思われますが、通勤時の電車等ではまともに使えない可能性もあるので注意です。

満足度はかなり高い

動画の通り、対人ゲームをプレイする程度であれば全く気にならない程度の遅延になり、有線イヤホンが大嫌いな私はかなり満足しています。

音質については、そんなに気にしない方なのでノーコメントとしますが、少なくともDAISOのイヤホンなんかよりはいい音は出てますし、少し前のAnker製品などでよく見られた「低音が大きすぎる」ということもありません。

ただし、何度も書きますが、USBアダプタを安物にするとせっかくの低遅延は活きませんし、安定性も下がります。イヤホンもそうですが、それ以上にUSBアダプタはケチらないことをおすすめします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメント一覧 (2件)

  • LLとHD組み合わせたaptX Adaptive対応イヤホンなら沢山Amazonにありますね

    低価格帯のならsoundpeats sonicがおすすめです

    • いくつか記事があったので見てみましたが、遅延に関してはまだaptX LLに軍配が上がるという情報が多いようです。

      とはいえ、安価でバリエーションが多いのはやはり魅力的ですね。遅延に関しても実際に使わないことにはなんとも言えないのでいずれ試してみます。

コメントする

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

目次